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代表挨拶

築地朝塾plus開塾への想い

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確認が大事だから古い手帳を探し出して確かめた。2014年版の手帳には本物の青いカビが生えていた。

1月30日 12:00 民放BS社長会 @クラブ関東。

記憶は正しくその日の光景が蘇る。

早めに着いたので窓から復元工事が急ピッチで進む東京駅の様子を眺めていると声をかけられた。「凄いニュースだね」と。

朝からのトップニュースは万能細胞“スタップ細胞”が開発されたというのもだった。テレビには若い女性研究者が笑顔で登場した。白衣は白衣だが割烹着姿で。人類はついに蓬莱山へのパスポートを手にしたのか。衝撃の万能再生細胞を開発した女性はカメラの前で普段と変わりなさそうな笑顔だ。しかも割烹着を着て。

「何か変だ。しっくり来ない」。

これだけの大ニュースなにの受け狙いのような映像が先行し、本題の細胞についての内容が薄い。

「これどこか変に思いません? 記者会見すれば当然生中継の価値がありますね。報道特番級のニュースですけど何故、割烹着姿のVTRだけなんだろう。怪しいとおもいません?この発表の仕方は疑問だよ」と返した。

その後の展開は自殺者まで出すスキャンダルとご存じの顛末となる。

長く情報を追いかけて来たから“ガセネタ”を掴んだ苦い経験が幾つかある。誰よりも早く情報を知ることが仕事だが、知った情報が真実なのか。どう確認すれば良いのか。知ったが故に立ちはだかる次の厚い壁を幾度も経験して来た。別の情報源を探さねばならない。そこから確認を取る(=裏を取る)ことがどうしても必要だ。

新しい情報には殊更神経質になる癖が、陸に上がった河童になって久しい2014年になってもまだ取れていなかった。

私に生の情報が飛び込んで来ることはもはや滅多にない。テレビからも新聞からも貴重な情報を取ろうと怠りないが99.999%二次、三次情報だ。その渦中で暮らすには触覚とか感性を鈍くしてはならないといまだに身構えている。真贋見分けようとする鎧は死ぬまで脱ぐ気はない。

午後三時。市場が閉まった終値の株価は確実なデーターだ。それ以外は「真か贋か」「嘘か真か」。情報は何時も何分か割り引いて聞いたり、読んだりしている。確かな事などそうない。秋の空だ。

一般市民という言い方は不適切だが、普段、人はニュースに登場する人と間近に話す機会はそうない。だが天変地異はさて置き、この世は全て人がナマズとなり“人ナマズ”がニュースの引き金を引く。

なら“人ナマズ”に会って話を聞ければ自分で真贋を見極める端緒は得られるのではないか。

私は幸運にも多くの“人ナマズ”に直接会って来た。心に残る“真(=まこと)の人マナズ”は皆さん教育者であった。取材者としての出会いが取材者を卒業した後は「助言を得たい」と何処までも訪ねて行くようになった。邂逅とは人生の宝物。幸運に感謝してきた。

話を聞く。

あるとき総理を退いた田中角栄が「君ぃ。誰にも平らに接したが良い。一視同仁だよ」と言った。若い記者に刺さった言葉は終生生きる軸になった。

10ヶ月前私は確かに疲れていた。深呼吸したいと「築地朝塾」を休塾としてきたが、ここで「築地朝塾plus」と名を改めて開塾を決めた。

幾つか私を突き動かすことがあった。最大の要因は新型コロナだ。「ステイホーム」がグローバルな合い言葉になって、出会いは断たれ、絆は寸断された。“生き残ることが最優先”になり“生きる意味とは何だ”、“生きている意味とは何だ”が問われなくなりつつあると感じ始めていた。「サバイバルの為の自衛策に必死」だと言えば、その他の思考、言動の停止は咎められない。この世相のままで良い筈がない。時は刻々と失われて行く。

そして急逝した岡本行夫が言い残したVTRが見つかった。「お前またこれ(=築地朝塾)やるんだよな」と話かけてくれていた。岡本は「築地朝塾」の最も心強いサポーターだった。遺言となった言葉が背中を強く押した。

『「真贋を見分け」「人間力」を付けてこの国を担いで行く人を世に送り出したいしそのきっかけを作りたい』。5年前の初心が改めての初心となって心に収まった。若くない。何処まで出来るか覚束ない。だけど今も心の支えになっている野中広務はこの歳で内閣官房長官を勤めていた。やれなくない。

志を同じくする人達と力を寄せ合い2020年秋「築地朝塾plus」を開塾する。

(敬称略)

                           2020年盛夏

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​著書出版のお知らせ

塾生向けページにて連載中の「塾長始末期」が単行本として発売されました。

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新聞掲載のお知らせ

2020年12月8日の毎日新聞の朝刊、「ひと」のコーナーにて塾長平本のインタビューが毎日新聞に掲載されました。

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